~卵巣がん~ 卵巣腫瘍と卵巣がん―胚細胞腫瘍
卵巣は主に以下の3つで形成されています。
卵巣の表面を覆う表層上皮、ホルモンを作る細胞である性索間質、卵子のもとになる卵細胞(胚細胞)です。
卵巣腫瘍の1つである胚細胞腫瘍は、胚細胞である卵細胞由来の腫瘍です。
幼年期を含む若年層に多い腫瘍です。
良性腫瘍・悪性腫瘍(がん)・良性と悪性の中間の性質を持つ中間群(境界悪性)があります。
胚細胞腫瘍には下記のような種類があります。
・成熟嚢胞性奇形腫 (せいじゅくのうほうせいきけいしゅ)
胎児が発生する段階の細胞が卵巣の中で腫瘍を形成したもの。
嚢胞内部に皮脂、毛髪、歯、軟骨などを含んでいます。
大きさは通常、直径10cm以下です。
皮様嚢胞腫、類皮嚢腫とも言います。
手塚治虫の漫画、ブラックジャックの中で、ブラックジャックがピノコを作ったのがこの腫瘍です。
良性の腫瘍です。
・未熟奇形腫
未熟な体細胞組織由来の奇形腫で、悪性と中間群にまたがる腫瘍です。
・卵黄嚢腫瘍
悪性腫瘍に分類されます。
10歳代にみられる腫瘍で、切除と化学療法による治療により、80%以上の生存率です。
・絨毛がん
絨毛細胞からなる悪性腫瘍です。
絨毛とは胎盤の外にある細い糸状組織で、これを通じて赤ちゃんは母親から酸素と栄養を受け取っています。
絨毛がんは流産や死産、正常分娩の後に残った絨毛などから発生します。
・未分化胚細胞腫
悪性腫瘍に分類されています。
思春期にみられる腫瘍で、卵巣卵管切除による腫瘍摘出と化学療法の併用により、約90%の生存率です。
この他にも、胚細胞腫瘍には様々な種類があります。
多くの種類のある卵巣腫瘍のうち85%は良性であり、卵巣がんではありません。
しかし、卵巣がんは進行が早く自覚症状が乏しいので、注意の必要ながんなのです。
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卵巣がんの症状について述べていきます。
初期にはほとんど症状がないため、卵巣がんの2/3は転移してから発覚するのが普通です。
卵巣がんは、転移しやすいタイプと転移しにくいタイプがあり、転移しにくいタイプは、腫瘍が小さいうちは子宮の定期健診などで発見されたりします。
やがて腫瘍が大きくなるにつれ、下腹部のしこりや圧迫感、膀胱圧迫による頻尿などの症状が出てきます。
そういった異常に気付いてエコー(超音波)検査を受け、卵巣がんの早期発見につながることがあります。
転移しやすいタイプの場合は、まだ卵巣内であまり大きくならないうちでも転移してしまいます。
腹水でおなかが膨れ、胸水の影響で息切れするなど、転移によって起こる症状が出て初めて異変に気づくことが多いです。
卵巣がんの転移の中でも一番多いのは、腹膜播種(ふくまくはしゅ)です。
がん細胞が、卵巣の表面から腹膜にかけて広がります。
腹膜播種は卵巣付近に限らず、卵巣から一番遠い腹膜の横隔膜にまでよく見られます。
がんが横隔膜から胸腔内に広がると胸水がたまり、リンパ節に転移すると腹部大動脈の周りのリンパ節や骨盤内のリンパ節が腫れ、次第に胸や首のリンパ節へも広がるケースがみられます。
転移しないタイプの卵巣がんは手術だけで治療できる一方、転移するタイプの場合には手術と併行して化学治療も必要になります。
診察やエコーで腫瘍が見つかっても、まだその時点では良性・悪性かは判断できず、画像診断や腫瘍マーカーを用いて判断されます。
画像診断の際にはエコー検査、MRI、CTなどが行われます。
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